ドラマ「すみれの花咲く頃」より,主演の未華子ちゃん.福島県は磐梯山のふもとの町に暮らす女子高生の「夢」と「現実」を描いた物語です.
未華子ちゃんは宝塚に憧れ,宝塚音楽学校入学を夢見る少女.宝塚の雑誌発売日には書店にダッシュです.
しかし,未華子ちゃんを取り巻く現実は宝塚への夢を阻むことばかり.未華子ちゃんの母親は離婚して以来,女手一つで寝たきりの父親と未華子ちゃんを支えており,家計は苦しい状況です.未華子ちゃん自身も祖父の世話と家事諸般を分担しなければならず,歌や踊りのレッスンをしたくても経済的・時間的に難しいのです.
学校では音楽の先生に歌のレッスンをしてもらっています.しかし,未華子ちゃんの夢を理解してくれる友達は少なく,宝塚への夢に一途な未華子ちゃんは級友にからかわれることも.
そんな状況下でも未華子ちゃんはアルバイトで得たお金でなんとかバレエ教室に通っています.でも,このことは母親には秘密にしています.家庭の状況を考えると,母親にはどうしても言い出せないのです.
西陽の射すバレエスタジオで,独り一心に舞う未華子ちゃん.若い美しさと,夢への情熱と,閉塞した現実から脱しようとする焦燥と.
「兵庫県にある宝塚音楽学校の受験資格は,中学卒の十五歳から高校卒の十八歳まで.多くの生徒が,中学卒業後もしくは高校を中退して入学している.」のだそうで.
ということで,未華子ちゃんの焦燥のもう一つの理由は年齢制限.十七歳の未華子ちゃんに残された時間は少ないのです.
家庭,友達,時間,この小さな田舎町のすべての現実が未華子ちゃんの夢を阻もうとしているのか.そんな閉塞感に満ちた状況に対する苛立ちとも怒りとも付かぬ思いを,未華子ちゃんをからかったことを詫びに来た級友にぶつけてしまいます.
バレエ教室の先生から,いつまでも親に内緒にしていてはいけないと諭される未華子ちゃん.結局,未華子ちゃんが自ら話す前に,ある出来事がきっかけとなって母親にバレエ教室通いを知られてしまうこととなります.
紆余曲折ありましたが,ヒステリックに怒っていた母親も最終的には未華子ちゃんの宝塚音楽学校受験を認めてくれました.寝たきりで口が利けない祖父も励ましの気持ちを伝えてくれました.以前,未華子ちゃんをからかった級友も,出発の朝,バス停まで見送りに来てくれました.
しかし,未華子ちゃんはバスが出発した直後,バスを止めて降りてきてしまいます.バスを降りて泣きじゃくる未華子ちゃんにどのような心境の変化があったのでしょうか.
しばらくたって,桜の花の舞うある日,級友たちと宝塚を訪れた未華子ちゃん.宝塚の劇場を見上げ,行き交う宝塚音楽学校生徒を見つめる未華子ちゃんの胸に去来する想いはどんなものだったのでしょう.
いやぁ,切なくていいドラマでした.夢と現実の狭間で悩み,夢へ向かって走り出すかに見えたものの,やはり現実を捨て切れなかった少女を未華子ちゃんが好演してました.未華子ちゃん,こういう役がハマりますね.
未華子ちゃんが感じていた,夢を阻む閉塞感の最大の原因は,やはり家庭の現実だったのだと思いますが,母親も祖父も別に未華子ちゃんを邪魔したかったわけではなく,それぞれに未華子ちゃんを愛し,支え,そして必要としていただけなのでしょう.寝たきりで口も利けず手も不自由な祖父がはなむけに作ってくれた折鶴がそのことを思い出させ,バスを止めさせたのだと思います.バスを降りて泣きじゃくる未華子ちゃんが印象的でした.
ところで,当初は未華子ちゃんをからかっていたものの,後にはよき理解者となる級友の少年を演じたのは濱田岳君.彼は「金八先生」では郡司あやのちゃんと,「女子刑務所東三号棟(6)」では川崎真央ちゃんと共演していました.2人のちびうさとの共演に加え,今回はスターヒーラーとも共演.次は誰と共演することになるのかな.(笑)
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